CPGマーケティングとは、食品や飲料、日用品といった消費財の認知度とブランドへの好意、そしてロイヤルティを高めるための活動と施策を指す。 CPGはConsumer Packaged Goodsの略で、消費者が繰り返し買い足す商品カテゴリーを指す。食品、飲料、家庭用洗剤、トイレタリー、化粧品などが該当し、日本語では「消費財」「日用消費財」、業界によってはFMCGとも呼ばれる。
CPGと耐久財の違い
消費財の対極にあるのが耐久財である。自動車や家電のように長く使い、買い替えの頻度が低い商品を指す。耐久財を買う消費者は、事前に調べ、価格を比較し、実物を試してから決める。消費財の購買判断はこれよりはるかに短く、棚の前やアプリの画面で数秒のうちに決まることも多い。ブランドは、その数秒より前に選ばれる理由を用意しておくことになる。CPGマーケティングの手法が、検討期間の長い商材とは別物になるのはこのためである。
CPGマーケティングが重要な理由
消費財の市場では、選択肢が多いことと、乗り換えのコストがほぼゼロであることが同時に成り立つ。スーパーやドラッグストアの棚には、同じカテゴリーの商品が10種類以上並ぶ。今日ある紅茶飲料を選んだ消費者が、明日別の銘柄を試すのに失うものはない。価格、品揃え、店頭での見え方、そのときの気分によって、購買は簡単に動く。
そのためCPGマーケティングは、購入の直前に働きかける販促と、想起され続けるためのブランド投資の両方を必要とする。P&Gやユニリーバのように認知度が飽和しているブランドが広告投資を続けているのは、想起の順位が下がった時点で棚の競争に不利になるからである。
ペイド施策とオーガニック施策
CPGマーケティングの施策は、媒体費を払うペイドと、自社の資産で接点を作るオーガニックに分かれる。
- ペイド:テレビCM、デジタル広告、リスティング広告(PPC)、屋外広告、SNS広告。費用を払って露出を買う。
- オーガニック:コンテンツマーケティング、SNSの自然投稿、メールマーケティング。媒体費をかけず、自社が保有する接点から届ける。
多くのCPGブランドは両方を組み合わせる。ペイドは短期の売上と新商品の立ち上がりを作り、オーガニックは自社が消費者と直接つながる経路を増やす。
CPG広告の主なチャネル
CPG広告は、到達量を買う設計から、購買への貢献を測れる設計へ移りつつある。チャネルごとの役割は次のように分かれる。
- マス広告:テレビ、新聞、交通広告。カテゴリー全体の想起を維持する。
- デジタル広告:運用型のディスプレイ広告と動画広告。サードパーティCookieの制限が進み、外部データに頼ったターゲティングの精度は落ちている。
- リテールメディア:小売企業が自社の購買データをもとに提供する広告枠。購買の近くで配信でき、効果を売上で確かめやすいため、CPGの予算移動先になっている。
- 店頭販促(トレードプロモーション):クーポン、値引き、エンド陳列。CPGの販促費のなかで最も大きな比率を占めることが多い。
- DTC(直販):自社ECとブランドサイト。売上規模は小さくても、消費者を識別できる数少ないチャネルである。
CPGマーケティングの3つの課題
ファーストパーティデータを持ちにくい。 消費財は小売店を介して売られるため、誰がいつ何をいくつ買ったかという購買データは小売側に残る。ブランドは自社商品の買い手を個別に把握できないまま、市場全体の集計値だけを見て意思決定することになる。この制約を外すには、ファーストパーティデータを自ら集める仕組みが必要になる。DTC、ロイヤルティプログラム、QRコードキャンペーン、懸賞、レシピサイト、アプリはいずれも消費者を識別できる接点だが、それぞれ別のシステムにデータが残るため、同じ人物が複数の別人として記録される。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、こうした接点を横断してレコードを突き合わせ、一人の顧客像にまとめる。
評判を統制できない。 レビューサイトとSNSが普及する前、ブランドの評判を形づくっていたのは主にブランド自身の発信だった。今は一件の低評価レビューが数万人の目に触れることもある。CPGマーケティングの仕事には、発信するだけでなく、消費者が書いたものを把握し、応答することが含まれるようになった。
ブランドロイヤルティが弱い。 かつては、世代を越えて同じ銘柄を使い続ける消費者が珍しくなかった。今の消費者は、価格やトレンド、店頭の品揃えによって銘柄を変える。CPGブランドは、一定割合の顧客が毎年離れる前提で新規獲得を回し続けることになる。購買間隔の変化から離反の兆候を捉え、パーソナライズした働きかけにつなげられるかどうかが、この循環の負担を左右する。
CPGマーケティングの効果測定
マーケティング分析は、過去を説明する分析と、将来を予測する分析に分かれる。前者は、実施した施策と売上の関係を後から説明する。後者は予測分析と呼ばれ、購買間隔や併買の履歴から次の購買を推定する。
消費財ブランドでは、市場全体の動きをシンジケートデータで把握するのが基本線になる。NielsenIQやCircana(旧IRI)、日本ではインテージなどが、小売店のPOSや消費者パネルから集めたデータを、市場シェアや配荷率の形で提供している。ただしシンジケートデータは集計値であり、個人単位の反応までは見えない。誰がプロモーションに反応して銘柄を変えたのかを知るには、自社のファーストパーティデータと突き合わせる必要がある。データクリーンルームを介した小売企業とのデータ連携は、互いに個人情報を開示せずにこの突き合わせを行う手段として使われている。
消費者データを統合した消費財ブランドの例
ネスレは、メキシコとブラジルでDTC、ロイヤルティプログラム、キャンペーンの各接点に散らばっていた消費者データを統合し、リード獲得単価を49%削減し、クリック率を71%改善した。購買時点を自社で持たない消費財ブランドでも、消費者と直接の関係を築けることを示す例である。データ統合の設計とプラットフォームの評価基準は、消費財ブランド向けのCDP活用ガイドで扱っている。
FAQ
CPGとは何の略か
CPGはConsumer Packaged Goods(消費財)の略で、食品、飲料、洗剤、トイレタリー、化粧品のように消費者が繰り返し購入する商品を指す。 日本語では「消費財」「日用消費財」と呼ばれ、FMCGもほぼ同じ範囲を指す。対になる概念は、自動車や家電のように買い替え頻度の低い耐久財である。
CPGマーケティングとリテールマーケティングは何が違うのか
CPGマーケティングは購入場所を問わず特定ブランドの商品への需要を作り、リテールマーケティングは特定の店舗やECサイトへの来店と売上を作る。 訴求する対象も違う。CPGブランドは自社商品を訴求し、小売企業は品揃え全体と買い物体験を訴求する。両者は共同販促で組むことが多いが、成果指標は一致しない。
小売を介して販売するCPGブランドは、どうやって消費者データを集めるのか
DTCサイト、ロイヤルティプログラム、懸賞、レシピサイト、アプリ、QRコードキャンペーンなど、消費者が自ら登録する接点を作ることで集める。 小売企業とは、データクリーンルームを介して個人情報を開示せずに購買データと突き合わせる方法もある。集めたデータは、CDPで一人の顧客像にまとめて初めて広告配信と効果測定に使える。
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