パーソナライズとは、顧客一人ひとりの属性や行動、嗜好にもとづいて、コミュニケーションや顧客体験を個別に最適化する取り組みである。 顧客データを参照できる状態にあれば、どのデジタルチャネルでも実行できる。氏名や住所、購買履歴、購入した商品、嗜好、行動データといった情報が、その材料になる。こうしたデータは接点ごとに分断されていることが多く、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、これらを一人の顧客像として統合したうえで、実行チャネルへ渡す役割を担う。
パーソナライズの2つの型
どこまで個別化するかによって、取りうる手法は変わる。1対1のパーソナライズは、その顧客固有の情報に直接ひもづけて内容を組み立てる。従来は運用の手間が制約になっていたが、AIパーソナライズによって大規模に運用できるようになってきた。もう一方は顧客セグメンテーションを用いる手法で、属性や行動の条件でセグメントを定義し、条件に合致した顧客へ共通の体験を届ける。
パーソナライズの深さにも幅がある。メールの書き出しに氏名を差し込むだけのものもあれば、直近の購買やWebサイトでの閲覧履歴を踏まえて本文そのものを組み立てるものもある。具体的には、次のような施策が該当する。
- 過去の購買やWeb閲覧履歴にもとづく商品レコメンド
- 訪問者の地域に応じたWebサイト上の商品プロモーションの出し分け
- 特定の製品を保有する顧客セグメントへのメールオファー
- 購入を検討している商品のセール情報を知らせるSMS通知
- 購入後の連絡による、満足度や不具合の確認
どの施策を、どの顧客に、どのタイミングで実行するかという判断そのものを自動化する段階に進むと、AI意思決定(AIディシジョニング)が関わってくる。
パーソナライズを支えるデータ
多くの消費者は、日常的に接するブランドに何らかのパーソナライズされた体験を期待している。マッキンゼー(McKinsey, 2021)の調査では、消費者の76%が、パーソナライズされたコミュニケーションを受け取ることをブランドの検討を後押しする要因として挙げている。ここで求められているのは、自分が何を求めているかをブランドが把握しており、関係のないメッセージやオファーが届かない状態である。それを満たせるかどうかは、手元にどのデータがあるかで決まる。
ゼロパーティデータとファーストパーティデータは、顧客とのやり取りから直接集めた情報である。顧客がパーソナライズに使われることを想定しているのは、まずこの二つだ。セカンドパーティデータとサードパーティデータはパートナーや外部事業者から取得するもので、出所と精度にばらつきがある。ファーストパーティデータと突き合わせて裏付けを取らないまま、そのままパーソナライズの根拠にするのは避けたい。
どこまでパーソナライズすべきか
いつ、どこで、どのようにパーソナライズするかは、顧客体験(CX)の設計として常に議論の的になる。踏み込みすぎた体験は、行動を追跡されているという印象を顧客に与える。逆に、メールに氏名を差し込むだけの施策は、パーソナライズと呼べる水準には届かない。
判断の目安になるのは、そのデータを渡した覚えが顧客の側にあるかどうかである。顧客が自ら登録した情報や、自社サイトでの行動にもとづく提案であれば、なぜその内容が届いたのかを説明できる。一方、顧客の知らないところで収集された行動から推定した提案は、精度が高いほど不信を招きやすい。
サードパーティCookie廃止後のパーソナライズ
企業は長年パーソナライズに取り組み、成果には差が出てきた。そこへ、サイトをまたいで消費者を追跡してきたサードパーティCookieの終わりが重なり、前提が変わった。追跡データを補う手立てとして、ブランドは顧客が自ら提供するゼロパーティデータとファーストパーティデータの収集と活用へ軸足を移している。
扱える顧客データが増えるほど、リアルタイムパーソナライゼーションやオムニチャネルマーケティングによって、顧客に理解されていると感じてもらえる余地は広がる。反対に、パーソナライズに取り組まない企業は、同じ商品を扱う競合が一人ひとりに合わせた体験を提供するなかで、比較検討の段階で選ばれにくくなる。
FAQ
パーソナライズとカスタマイズの違いは何か
パーソナライズは、顧客データと行動にもとづいてブランド側が自動的に体験を最適化する仕組みであり、カスタマイズは、顧客自身が設定や好みを手動で調整することを指す。 パーソナライズはAIやアルゴリズムで顧客が求めるものを予測し、カスタマイズは選択の主導権を顧客に渡す。両者は排他ではなく、組み合わせて使える。
中小規模の企業でもパーソナライズは始められるか
始められる。メールでの氏名の差し込みや、購買行動によるメールリストのセグメント分けといった基本的な施策は、大きな初期投資なしに着手できる。 パーソナライズ機能を備えたメール配信ツールや、レコメンドを追加するWebサイトのプラグインを使えば、閲覧履歴にもとづく商品レコメンドまで踏み込める。まずは自社サイトとメールから得られるファーストパーティデータに絞るのが現実的である。
パーソナライズにはどのようなプライバシー上の懸念があるか
主な懸念は、データの利用目的が説明されていないこと、外部事業者へのデータ提供、そして情報漏洩の三つである。 顧客は、必要以上のデータが集められることや、想定していない用途に使われることを警戒する。対処には、プライバシーポリシーの明示、明確な同意取得の仕組み、顧客が自分のデータを確認し削除できる手段、そしてパーソナライズを顧客にとって価値のある範囲にとどめる運用が要る。
Related Terms
- ネクストベストアクション — 顧客の文脈から、次に取るべき最適な行動を選ぶ考え方
- カスタマージャーニー — パーソナライズを適用する各段階を示す全体の道筋
- 顧客エンゲージメント — パーソナライズが最終的に高めようとする成果
- パーソナライゼーションエンジン — パーソナライズを実行に移す実装レイヤー