オーディエンスセグメンテーションとは、幅広いオーディエンスを、共通する属性や行動、ニーズに基づいて意味のあるまとまりへ分ける手法である。 まとまりごとにメッセージやオファーを変えることで、一律の内容では反応しなかった相手にも、その関心に沿った提案を届けられる。
対象とする範囲は顧客セグメンテーションより広い。購買履歴のある既知の顧客だけでなく、まだ購入に至っていない見込み客、匿名のサイト訪問者、SNSのフォロワーなど、取引関係がほとんど、あるいはまったくない相手も含む。認知の獲得や新規顧客の開拓といったファネル上部の施策でオーディエンスセグメンテーションが使われるのは、この広さゆえである。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、匿名と既知が混在するこれらのデータを一つにまとめ、セグメントとして扱える状態にする。
顧客セグメンテーションとの違い
2つの語は同じ意味で使われることもあるが、扱うデータが異なる。顧客セグメンテーションは、購買履歴、生涯価値、製品の好み、関係の深さといった取引の記録をもとに、既知の顧客を分析する。オーディエンスセグメンテーションは顧客と非顧客の両方を含む母集団を扱い、取引の記録がない相手については、推定された属性やエンゲージメントのシグナル、接点が生まれた状況から判断する。
動画配信サービスを例に取る。オリジナル作品を一気に視聴する高価値の会員を見つけ出すのは顧客セグメンテーションの仕事だ。一方、エンターテインメント関連の話題には反応するがまだ登録していないSNS利用者を対象に取るのが、オーディエンスセグメンテーションである。
オーディエンスセグメンテーションの主な種類
分類軸は大きく5つある。実務では1つだけを使うことは少なく、複数を掛け合わせて対象を絞り込む。
デモグラフィックによるセグメント
年齢、性別、収入、学歴、職業、家族構成といった、数量として把握できる人口動態の属性で分ける。導入は容易だが、これだけではパーソナライズに必要な解像度に届かないことが多い。
サイコグラフィックによるセグメント
価値観、関心、生活様式、性格傾向で分ける。外部データによるデータの拡充(データエンリッチメント)と組み合わせることが多く、相手が誰かだけでなく、その意思決定を何が動かしているかまで捉えられる。
行動によるセグメント
閲覧の傾向、コンテンツの消費、メールへの反応、購買意向のシグナルなど、行動データで分ける。本人が申告した好みではなく実際に取った行動を反映するため、施策の精度が上がりやすい。
状況によるセグメント
デバイスの種類、位置、時間帯、天候、その時々の出来事など、接点が生まれた状況で分ける。店舗の近くにいるモバイル利用者と、自宅のPCで製品を比べている利用者とでは、届けるべき内容が変わる。
利用技術によるセグメント
OS、ブラウザ、業務システム、接続機器など、相手が使っている技術で分ける。B2Bでは競合製品からの乗り換え提案に、B2Cでは機器に応じた体験の出し分けに使う。
CDPによるセグメント構築の仕組み
CDPは、Webサイト、モバイルアプリ、メール配信基盤、広告プラットフォーム、CRMなど複数のソースからデータを集め、名寄せによって一人の顧客像へと束ねる。このCustomer 360と呼ばれる統合プロファイルが、セグメントを組むための土台になる。
土台がそろうと、種類の異なるデータをまたいだ条件を1つのセグメントに書ける。たとえばB2Bのソフトウェア企業であれば、「直近1週間で料金ページを3回訪れ、金融業界に属し、資料をまだダウンロードしていない見込み客」というセグメントを作り、そのまま広告プラットフォームへ同期できる。
さらにCDPは、所属するセグメントをリアルタイムで更新する。新しい行動を取った人はその場で別のセグメントへ移り、いま何を求めているかに合ったメッセージが届く。セグメンテーションは、四半期ごとに分析チームが作る資料ではなく、日々動き続ける運用機能へと変わった。
AIがセグメントの作り方をどう変えるか
従来のセグメンテーションでは、マーケターが「何が効くか」という仮説を立て、条件を手で定義していた。AIによる顧客セグメンテーションは出発点が異なる。機械学習が数百から数千の属性を同時に見て、人が仮説として持たなかったまとまりを見つけ出す。
見つかるのは、粒度の細かいマイクロセグメントである。「フィットネスに関心のあるミレニアル世代」といった粗い括りではなく、「週末に健康関連のコンテンツへ反応し、動画形式を好み、上位プランへの関心を示している都市部の28〜34歳」といった集団を切り出せる。条件が具体的なぶん、同じ予算でもコンバージョン率が高くなりやすい。
予測に基づくセグメントも組める。類似オーディエンスモデルは既存の優良顧客に似た見込み客を抽出し、プロペンシティモデリングはコンバージョンや解約の起こりやすさを推定する。まだ起きていない行動を手がかりに対象を選べるため、予算と工数をどこへ寄せるかを事前に決められる。
モデルは新しいデータで継続的に学習し直す。消費者の行動や市場環境が変わっても、セグメントの条件を人が組み直す頻度は下がり、条件が古びたまま配信が続く事態を避けやすくなる。
ファーストパーティデータ時代のセグメンテーション
外部から購入したオーディエンスデータに頼るターゲティングは、ブラウザによるサードパーティCookieの制限とプライバシー規制によって使える範囲が狭まってきた。そのぶん、自社の接点で集めたファーストパーティデータを土台にしたセグメントの重みが増している。
セグメンテーションの効果は、施策の成果にとどまらない。どのまとまりに見込みがあるかがわかれば予算と工数の配分を決められるし、一斉配信ではなく相手に合った連絡が届くことで顧客体験も良くなる。オーディエンスの構成や関心の分布は、顧客インテリジェンスとして商品開発や事業計画の判断材料にもなる。
FAQ
オーディエンスセグメンテーションの主な種類は何か
デモグラフィック(年齢、性別、収入、学歴などの人口動態属性)、サイコグラフィック(価値観、関心、生活様式)、行動(閲覧やメールへの反応などの実際の行動)、状況(デバイス、位置、時間帯)、利用技術(OS、ブラウザ、接続機器)の5つが主な分類軸である。 多くの企業はこれらを掛け合わせて対象を絞り込み、施策の精度を上げている。
オーディエンスセグメンテーションと顧客セグメンテーションの違いは何か
オーディエンスセグメンテーションは、見込み客や匿名の訪問者、SNSのフォロワーなど取引関係のない相手まで含むため、認知の獲得や新規開拓に向く。顧客セグメンテーションは購買履歴のある既知の顧客に絞り、生涯価値や製品の好み、関係の深さを分析する。 顧客セグメンテーションが取引データに依拠するのに対し、オーディエンスセグメンテーションは推定された属性やエンゲージメントのシグナルを多く使う。
AIはオーディエンスセグメンテーションをどう変えるのか
AIは数百から数千の属性を同時に分析し、人が仮説として持たなかったマイクロセグメントを見つけ出す。 行動の変化に応じて所属セグメントをリアルタイムで組み替えられるため、条件が古びたまま配信が続く事態を避けやすい。プロペンシティモデリングや類似オーディエンスモデルによって、まだ起きていない行動を手がかりに対象を選ぶことも可能になる。
Related Terms
- データアクティベーション:作成したセグメントを各マーケティングチャネルへ届け、実行可能にする仕組み
- ネクストベストアクション:セグメントという文脈をもとに、一人ひとりへの最適な打ち手を選ぶ
- リアルタイムCDP:行動の変化に合わせてセグメントの所属を即時に更新する基盤
- クロスチャネルマーケティング:同じセグメントに対して複数チャネルで一貫した働きかけを行う
- カスタマージャーニー:セグメントごとに異なる、認知から推奨までの道筋